特定技能外国人の受け入れを検討する企業にとって、失踪問題は深刻な経営リスクです。失踪が発生すると、出入国在留管理庁への届出義務が生じるだけでなく、新規受け入れの停止処分を受ける可能性があります。
さらに、採用コストの損失や職場の人材不足といった実務的な影響も無視できません。特定技能1号や2号の外国人労働者を雇用する会社では、失踪防止の知識を徹底することが不可欠です。
本記事では、特定技能外国人の失踪問題について、最新の統計データに基づく現状分析から、失踪に至る具体的な原因、企業が負うペナルティの内容、そして効果的な防止対策まで、人事担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。外国人材紹介サービスを活用する際の注意点も含め、実践的なポイントをお伝えします。
特定技能外国人の失踪の現状

特定技能制度は2019年4月に創設された比較的新しい在留資格です。制度開始当初は失踪者数が非常に少なかったものの、受け入れ人数の増加に伴い、失踪者数も一定の増加傾向にあります。とはいえ、失踪率は0.1%から0.15%と低水準にとどまっており、全体的なリスクはコントロールされています。
企業の受け入れ体制の整備は依然として重要な課題であり、特にベトナムなどアジア諸国からの外国人労働者を多く受け入れる事業者にとっては、失踪リスク管理が経営上の重要ポイントです。所属機関である企業が適切な管理体制を構築することで、失踪を未然に防ぐことが可能となります。
失踪者数の推移データ
特定技能外国人の失踪者数は制度開始以降、年間でごく少数の水準で推移しています。2019年度は制度開始直後で受け入れ人数自体が少なかったため失踪者数も限定的でしたが、2020年度以降も受け入れ人数の増加に対して失踪者数の増加傾向は見られていません。2021年度の公式統計では失踪者数は76人(割合0.14%)にとどまっています。
新型コロナウイルス感染症の影響下で労働条件の変更や雇用契約の解除が発生したものの、特定技能制度全体の失踪率は低く抑制されています。このような背景から、出入国在留管理庁は失踪者の早期発見と再発防止のため、受け入れ企業に対する監督を強化しているのが現状です。特定技能1号で働く外国人は最長5年の在留が可能ですが、失踪により在留資格を失ってしまうケースも少なくありません。
参考:出入国在留管理庁
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第1回)技能実習制度及び特定技能制度の現状について(30ページ))
分野別の失踪発生状況
特定技能制度では16の分野で外国人材の受け入れが可能ですが、失踪発生率は分野によって一部異なります。例えば、農業分野や飲食料品製造業分野は、業務量の季節変動により労働環境が不安定になりやすく、失踪リスクが高くなる傾向があります。
一方、介護分野や産業機械製造業分野では安定した雇用環境が整備されており、失踪率は相対的に低いのが特徴です。特に介護分野は、特定技能2号への移行が可能なことも定着率向上につながっています。
また、宿泊業や外食業ではコロナ禍の営業制限による雇用契約変更に伴う失踪事例も確認されるなど、各分野特有の事情も考慮すべきでしょう。出入国在留管理庁が公開する分野別の失踪状況一覧を参考にすると、自社の業種における傾向を把握できます。
技能実習生との比較分析
特定技能外国人と技能実習生の失踪率を比較すると、技能実習制度の方が圧倒的に高い数値を示しています。技能実習制度では2023年で約9,753人、失踪率は1%から2%台で推移しています。技能実習生は転職の自由がほぼ認められていないため、劣悪な労働環境から逃れるため失踪せざるを得ない状況がみられました。
対して特定技能制度は同一分野内の転職が認められており、受入企業の対応によって失踪リスクが抑制されています。技能実習制度の教訓を踏まえ、受け入れ体制の改善が特定技能でも重要となっています。
| 比較項目 | 特定技能外国人 | 技能実習生 |
|---|---|---|
| 年間失踪者数 | 数十~百人規模 | 数千〜約1万人規模 |
| 失踪率 | 1%未満 | 1~2%台 |
| 主な失踪理由 |
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| 転職の自由度 | 同一分野内で転職可能 | 原則転職不可 |
| 在留期間 |
| 最長5年(1号~3号合計) |
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特定技能外国人が失踪する原因

特定技能外国人の失踪は、単一の要因ではなく複数の問題が重なって発生します。企業側が事前に想定していなかった労働環境のギャップや、日常的なコミュニケーション不足が積み重なることで、外国人材は不安や不満を抱え、最終的に失踪という選択に至ります。
失踪を防ぐためには、これらの原因を正確に理解し、受け入れ段階から適切な対策を講じることが重要です。何が問題なのかを徹底的に分析し、予防策を立てる必要があります。
労働条件に関する問題点
失踪の最も大きな原因は、雇用契約時に提示された労働条件と実際の就労状況との乖離です。約束された給与が支払われない、残業代が適切に計算されていないといった問題が典型例として挙げられます。
特に、求人情報や雇用契約書に記載された月給と実際の手取り額が大きく異なるケースでは、外国人材の生活設計が崩れてしまいます。その結果、より良い条件を求めて失踪するリスクが高まるのです。ベトナムなどから来日する特定技能1号の外国人労働者は、母国の家族への送金も考慮して働くため、給与面での期待値のギャップは特に深刻です。
- 雇用契約書と実際の給与額の相違
- 残業代の未払いや不適切な計算
- 約束された休日が取得できない状況
- 労働基準法に違反する長時間労働
- 賃金支払いの遅延や控除項目の不透明さ
- 危険な作業環境での就労強制
- 試験合格後の待遇変更の説明不足
賃金の支払いが遅延したり、控除項目が不明瞭だったりする場合も、外国人材の信頼を失う原因になります。労働基準法違反の就労環境は、失踪を誘発する重大な要因です。
職場のコミュニケーション課題
言語や文化の違いから生じるコミュニケーション不足も、失踪の重要な要因です。日本語能力が十分でない外国人材に対して、業務指示が曖昧だったり、安全教育が不十分だったりすると、職場での孤立感や不安が増大します。上司や同僚との日常的な会話が成立しない環境では、困りごとや悩みを相談する機会が失われてしまうでしょう。
問題が深刻化してから発覚するケースが多いのは、このような背景があるためです。オンラインでの相談サービスを提供する会社もありますが、それを知らずに働く外国人も少なくありません。文化的な背景の違いを理解せずに叱責したり、差別的な言動があったりすると、外国人材は職場に居場所を感じられなくなります。定期的な面談や母国語でのサポート体制がない企業では、外国人材の不満や問題を早期に把握できません。
その結果、突然の失踪につながるケースもみられます。介護分野などでは利用者とのコミュニケーションも重要であり、言語面でのサポートは特に注意が必要です。
| コミュニケーション課題 | 具体的な問題 | 外国人材への影響 |
|---|---|---|
| 言語の壁 |
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| 相談窓口の不在 |
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| 文化理解の欠如 |
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| 差別的言動 |
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| オンライン支援の未周知 |
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生活環境とサポート不足
就労面だけでなく、日本での生活全般に関するサポート不足も失踪の原因となります。住居環境が劣悪だったり、生活必需品の購入方法がわからなかったりすると、外国人材は日本での生活に強い不安を感じるでしょう。病気になった時の対応方法がわからない状況も、深刻な問題です。特に家族を母国に残して単身で働く外国人労働者にとって、生活面での孤独感は大きなストレス要因となります。
特定技能制度では、受け入れ企業または登録支援機関が生活オリエンテーションや行政手続きのサポートを提供する義務があります。しかし、これらが形式的にしか実施されていない場合、外国人材は孤立してしまうのです。家族や友人との連絡手段が限られていたり、母国の文化や宗教を尊重されなかったりすることも、精神的なストレスを蓄積させる要因となります。
- 住居環境が劣悪(設備不良、過度に狭い居室)
- 生活オリエンテーションの形骸化
- 医療機関の受診方法がわからない
- 行政手続きのサポート欠如
- 母国の文化や宗教への配慮不足
- 過度な寮費や管理費の控除
- 家族との連絡手段の制限
- 在留資格変更手続きの説明不足
給与から不当に高額な寮費や管理費を控除されるケースでは、経済的な困窮から失踪に至ることもあります。特定技能2号への移行を希望する外国人にとって、在留資格変更の手続きに関する情報提供も重要なサポートです。
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失踪発生時の企業ペナルティ

特定技能外国人が失踪した場合、企業は法令に基づく厳格な責任を負います。単なる人材の損失にとどまらず、行政処分や今後の外国人材受け入れに対する制限など、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
失踪発生時のペナルティを正確に理解することは、リスク管理の観点から極めて重要です。外国人材紹介サービスを利用している会社であっても、受け入れ企業としての責任は免れません。
参考:出入国在留管理庁 特定技能外国人受入れに関する運用要領
受け入れ停止処分の内容
失踪が発生した企業に対しては、出入国在留管理庁による厳しい調査が実施されます。企業側に法令違反や不適切な受け入れ体制が認められた場合、新規の特定技能外国人の受け入れが一定期間停止されるのです。
具体的な停止期間は違反の内容や悪質性によって異なりますが、軽微なケースでも6ヶ月程度、重大な労働基準法違反や人権侵害が認められた場合は数年間にわたって受け入れが禁止されることもあります。この処分は最新の違反事例として企業名とともに公表される場合があり、企業のブランドイメージや採用活動全般に悪影響を及ぼすでしょう。
受け入れ停止期間中は既に雇用している特定技能外国人の在留期間更新にも影響が出る可能性があり、人材確保計画全体が狂うリスクがあります。特に建設分野や産業機械製造業分野など、複数の特定技能外国人を雇用している事業者にとって、この処分は事業継続に関わる重大な問題です。
- 賃金の未払いや不当な控除
- 労働時間の虚偽申告
- 支援義務の不履行
- 労働基準法違反の就労環境
- 人権侵害行為
- 雇用契約内容と実態の重大な相違
- 在留資格取得に関する不正行為
処分の重さは違反の悪質性によって判断され、企業の今後の外国人材活用に長期的な制約をもたらします。
登録支援機関への影響
企業が登録支援機関に支援業務を委託している場合、失踪発生時には支援機関も責任を問われる可能性があります。支援機関が定期的な面談や相談対応を適切に実施していなかった場合、支援義務違反として出入国在留管理庁から指導や改善命令を受けるのです。
悪質なケースでは登録支援機関としての登録が取り消され、その機関を利用していた他の企業にも影響が波及します。外国人材紹介サービスと支援サービスを一体で提供している会社の場合、登録取消は事業全体に深刻な打撃となるでしょう。
企業としては、委託先の支援機関が適切に業務を履行しているかを定期的に確認する必要があります。支援機関任せにすることはリスクとなるのです。失踪発生後の対応においても、企業と支援機関が連携して出入国在留管理庁への報告や再発防止策の策定を行わなければ、双方が責任を問われる事態になります。
| 影響を受ける主体 | ペナルティの内容 | 波及効果 |
|---|---|---|
| 登録支援機関 | 指導・改善命令、登録取消 | 支援業務の停止 |
| 委託企業 | 支援体制の再構築が必要 | 追加コストと時間 |
| 他の利用企業 | 支援機関変更の必要性 | 業務の混乱 |
| 紹介サービス事業 | 信用失墜による契約減少 | 事業収益への影響 |
失踪発生時の対応手順

特定技能外国人の失踪が発覚した際には、迅速かつ適切な対応が求められます。初動対応の遅れや手続きの不備は、企業が負う責任をさらに重くする要因となるでしょう。
法令に基づいた正確な手順を踏むことで、行政処分のリスクを最小限に抑えることができます。何をすべきか、どの順序で行わなければならないかを徹底的に理解しておく必要があります。所属機関としての責任を果たすため、対応手順の一覧を作成し、社内で共有しておくことが重要です。
参考:出入国在留管理庁 特定技能外国人受入れに関する運用要領
発覚直後の必要手続き
失踪が発覚した時点で、企業は直ちに複数の対応を開始する必要があります。まず、外国人材の所在確認を徹底的に行うことが最優先です。携帯電話への連絡、寮や住居の確認、同僚や知人への聞き取りなど、可能な限りの手段を尽くします。
同時に、失踪に至った経緯や状況を詳細に記録しておくことが重要です。勤怠記録、最後に出勤した日時、失踪前の様子や会話内容などを時系列で整理します。
- 外国人材への連絡試行(電話、メール、SNS等)
- 住居・寮への訪問と状況確認
- 同僚や知人への聞き取り調査
- 失踪に至る経緯の詳細な記録作成
- 最終出勤日と勤怠状況の確認
- 所持品や私物の保管状況確認
- 家族への連絡(可能な場合)
所在が判明しない場合は、警察への捜索願の提出も検討する必要があります。これらの初動対応は、後の出入国在留管理庁への報告や調査において、企業が適切な管理を行っていた証拠となるのです。
特定技能1号で働く外国人の場合、在留期間内の失踪であれば在留資格が残っているため、早期発見が重要となります。対応手順の一覧を事前に作成しておくことで、緊急時にも冷静に対処できるでしょう。
関係機関への報告方法
失踪が発覚した場合、企業には複数の関係機関への報告が求められます。中でも出入国在留管理庁への届出は罰則を伴う法的義務であり、最優先で対応しなければなりません。
出入国在留管理庁への届出
外国人が連絡なく欠勤し、所在が確認できなくなった時点から14日以内に「受入れ困難に係る届出」を提出する必要があります。この届出を怠ったり、虚偽の報告をしたりすると、出入国管理及び難民認定法違反として30万円以下の罰金が科される可能性があります。届出に記載する失踪の経緯や企業の対応内容は、その後の調査の基礎資料となるため、正確な情報提供が必須です。
その他の関係機関への報告
出入国在留管理庁への届出と並行して、以下の関係機関にも速やかに連絡し、連携して対応にあたる必要があります。
| 報告先 | 報告期限 | 必要書類・情報 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 出入国在留管理庁 | 失踪判明から14日以内 | 受入れ困難に係る届出、失踪の経緯詳細 | 法的義務。オンラインまたは窓口提出。 |
| 登録支援機関 | 失踪判明後直ちに | 失踪状況、企業の対応内容 | 連携して対応策を検討する。 |
| 警察(必要に応じて) | 状況判断による | 捜索願、失踪者の情報 | 事件性の有無を判断するために相談する。 |
| ハローワーク | 雇用保険資格喪失時 | 雇用保険被保険者資格喪失届 | 失踪が確定し、雇用契約を処理した後に手続きする。 |
| 紹介サービス会社 | 失踪判明後速やかに | 失踪状況の概要 | 契約内容に応じた報告を行う。 |
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届出の際には、企業側に法令違反がなかったことを示す証拠資料(雇用契約書、賃金台帳、勤怠記録など)も準備しておくことが望ましいでしょう。所属機関として適切な管理を行っていたことを証明する書類の一覧を事前に整理しておくことで、スムーズな対応が可能となります。
参考:出入国在留管理庁 特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
雇用契約の処理と事後対応
失踪者の所在が一定期間確認できない場合、雇用契約の処理を進める必要があります。一般的には、無断欠勤が2週間以上継続し、連絡が取れない状況が続いた時点で、就業規則に基づいて雇用契約を解除する手続きを行います。この際、解雇通知書を作成し、最後に把握している住所に送付することが重要です。特定技能2号の外国人労働者の場合、在留期間の更新が可能であるため、失踪による契約解除は特に慎重に行わなければなりません。
雇用保険や社会保険の資格喪失手続きも速やかに実施する必要があります。ハローワークへの雇用保険被保険者資格喪失届の提出、年金事務所への社会保険資格喪失届の提出が必要です。給与の未払い分がある場合は、法務局への供託手続きを検討します。次の事後対応チェックリストに沿って進めることが重要です。
- 就業規則に基づく雇用契約解除手続き
- 解雇通知書の作成と送付
- 雇用保険資格喪失届の提出(ハローワーク)
- 社会保険資格喪失届の提出(年金事務所)
- 未払い給与がある場合の供託手続き
- 在留カードや社員証などの無効化処理
- 寮や社宅の私物整理と保管
- 再発防止策の策定と文書化
失踪の原因分析と再発防止策の策定も重要な事後対応です。出入国在留管理庁からの調査や指導に備え、失踪に至った要因を客観的に分析し、労働環境の改善点や支援体制の強化策を文書化しておく必要があります。これらの対応は、今後の外国人材受け入れにおける信頼性を維持するために不可欠です。
介護分野や建設分野など、継続的に外国人労働者を雇用する事業者は、特に徹底した再発防止策が求められます。事後対応の手順一覧を作成し、関係部署で共有しておくことで、組織全体での対応力を高めることができるでしょう。
参考:出入国在留管理庁 特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
特定技能外国人の失踪を防ぐ対策

失踪問題を未然に防ぐためには、受け入れ前の準備段階から就労開始後の継続的なサポートまで、体系的な対策が必要です。単発的な取り組みではなく、企業全体で外国人材を受け入れる体制を整備することが、失踪リスクを最小化する鍵となります。最新の知識に基づいた対策を徹底することで、外国人労働者が安心して働く環境を作れます。
受け入れ前の準備とチェックポイント
失踪防止の第一歩は、採用段階での適切な人材選定と情報提供です。求人情報や雇用契約書には、給与額、労働時間、休日、業務内容などを具体的かつ正確に記載しなければなりません。特に給与については、基本給、各種手当、控除項目、手取り予想額まで明示することで、入国後のギャップを防ぐことができます。
外国人材紹介サービスを利用する場合も、紹介会社任せにせず、企業自身が直接説明する機会を設けることが重要なポイントです。
面接時には、業務内容や職場環境について写真や動画を使って具体的に説明すると理解が深まるでしょう。日本での生活費や気候、文化的な違いについても事前に情報提供し、外国人材が現実的な期待を持って来日できるようにします。特に介護分野では、利用者とのコミュニケーションや身体介助の具体的な内容を説明し、仕事の特徴を理解してもらう必要があります。
| 準備段階 | チェック項目 | 目的 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 求人情報作成 | 給与・労働条件の詳細明示、控除項目の説明 | 期待値のギャップ防止 | 手取り額を明確に |
| 面接・選考 | 業務内容の具体的説明、職場環境の可視化 | 相互理解の促進 | 写真・動画を活用 |
| 契約締結 | 雇用契約書の母国語版作成、十分な説明時間 | 契約内容の正確な理解 | 質問時間を確保 |
| 入国前準備 | 生活オリエンテーション資料の送付、住居の確保 | 来日後の不安軽減 | オンライン説明会も有効 |
| 試験・資格確認 | 特定技能試験の合格証明、日本語能力の確認 | 適格性の担保 | 1号・2号の要件確認 |
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雇用契約書は日本語版だけでなく、外国人材の母国語版も用意し、内容を十分に理解した上で署名してもらうことが必須です。契約内容について疑問や不安がないか、時間をかけて確認する姿勢が信頼関係の構築につながります。
特定技能1号から2号への移行を希望する外国人には、その要件や手続きについても説明しておくべきでしょう。
就労開始後の定期的なサポート体制
就労開始後は、定期的な面談を通じて外国人材の状況を把握することが重要です。最低でも月1回、できれば週1回程度の頻度で、業務上の困りごとや生活面での悩みを聞く機会を設けましょう。
面談は形式的なものではなく、外国人材が本音を話せる雰囲気づくりが大切です。オンラインでの相談サービスも併用することで、緊急時や夜間でも対応できる体制を整えることがポイントです。
給与明細は毎月丁寧に説明し、控除項目の内訳や手取り額の計算根拠を明確にします。特に初回の給与支払い時には、事前に説明した金額と相違がないか、外国人材と一緒に確認することが信頼醸成につながるのです。産業機械製造業や建設分野など、残業が発生しやすい職種では、残業代の計算方法を徹底的に説明する必要があります。
- 定期面談の実施(月1回以上、母国語対応可能な体制)
- 給与明細の詳細な説明と質疑応答の機会
- 24時間対応可能な緊急連絡窓口の設置
- 職場での日本語学習支援プログラム
- 同国出身者コミュニティとの交流機会提供
- 文化・宗教への配慮(礼拝室、食事への対応等)
- 定期的な健康診断と医療サポート
- オンライン相談サービスの周知徹底
- 家族との連絡手段の確保支援
- 在留資格変更や更新手続きのサポート
職場でのコミュニケーションを円滑にするため、日本人従業員向けの異文化理解研修も実施しましょう。外国人材が孤立しない職場環境を作ることが、失踪防止の基盤となります。ベトナムなど特定の国からの外国人が多い場合は、その国の文化や習慣について会社全体で知識を共有することが重要です。
支援機関との効果的な連携方法
登録支援機関を活用する場合は、単に業務を丸投げするのではなく、企業と支援機関が密に連携する体制を構築することが重要です。支援機関からの定期報告を受けるだけでなく、企業側からも職場での様子や気になる点を積極的に共有します。
外国人材が支援機関に相談した内容は、個人情報に配慮しつつ企業にもフィードバックされる仕組みを作ることで、問題の早期発見が可能となるでしょう。何か異変があれば、支援機関と企業が即座に連携できる体制が理想です。
支援機関の選定時には、実績や対応言語だけでなく、緊急時の対応体制や面談の頻度、相談窓口の運用方法なども確認します。契約後も定期的に支援内容の評価を行い、必要に応じて改善を求めることが大切です。外国人材紹介サービスと支援サービスを一体で提供している会社の場合、採用から定着支援までの一貫したサポートが期待できるポイントがあります。
| 連携のポイント | 具体的な方法 | 期待される効果 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 情報共有体制 | 月次報告会の実施、問題発生時の即時連絡 | 問題の早期発見と対応 | オンライン会議も活用 |
| 役割分担の明確化 | 企業と支援機関の責任範囲を文書化 | 対応漏れの防止 | 契約書に明記 |
| 外国人材との三者面談 | 定期的な三者面談の実施 | 相互理解の促進 | 通訳を配置 |
| 緊急時対応計画 | 連絡体制と対応手順の事前共有 | 迅速な問題解決 | 24時間連絡体制 |
| 支援の質の評価 | 外国人材からのフィードバック収集 | サービス改善 | 匿名性を確保 |
※横スクロールできます→
自社で支援を行う場合は、支援責任者を明確に定め、必要な研修を受講させることが求められます。出入国在留管理庁が提供する支援担当者向けの研修プログラムを活用し、法令や支援義務について正確な知識を持つことが不可欠です。
介護分野や産業分野など、専門性の高い業種では、業界特有の課題に対応できる知識も必要となります。最新の制度変更にも注意し、特定技能1号から2号への移行支援など、長期的なキャリア形成をサポートする体制を整えることが、外国人材の定着率向上につながるでしょう。
参考:出入国在留管理庁 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
特定技能外国人を受け入れる際、企業には様々な支援義務が課せられています。その中でも最初に実施すべきなのが「事前ガイダンス」です。採用活動を経て、入国前に労働条件や生活情報を十分に説明することで、外国人材の不安や悩みを解消し、スムーズな受入れ[…]
特定技能外国人労働者を採用する際、多くの企業が「生活オリエンテーション」という言葉を耳にするでしょう。しかし、具体的に何を伝えればいいのか、どのように実施すればよいのか、悩まれる人事担当者の方は少なくありません。生活オリエンテーショ[…]
グローバル化が進む中、多くの日本企業が外国人社員を採用するようになっています。しかし、採用後に直面する大きな課題のひとつが「日本語でのコミュニケーション」です。業務の指示が伝わらない、会議で発言が難しい、日常会話に壁を感じるといった問題は、[…]
まとめ|特定技能外国人の失踪を防ぐために

特定技能外国人の失踪問題は、企業にとって人材損失だけでなく、行政処分や受け入れ停止といった深刻な経営リスクをもたらします。失踪の主な原因は、雇用契約と実態の乖離、職場でのコミュニケーション不足、生活面でのサポート不足です。これらは企業側の適切な対応によって防ぐことができます。
失踪が発生した際には、14日以内の出入国在留管理庁への届出が法的義務となり、違反すれば罰則の対象となります。さらに、企業側に法令違反や不適切な受け入れ体制が認められた場合、新規受け入れの停止処分という厳しいペナルティを受ける可能性があるのです。このような事態を避けるためには、受け入れ前の準備段階から就労開始後の継続的なサポートまで、体系的な失踪防止策を講じることが不可欠となります。
具体的なポイントとしては、採用時の正確な情報提供、雇用契約内容の母国語での丁寧な説明、定期的な面談による状況把握、給与明細の詳細な説明、24時間対応可能な相談窓口の設置などが効果的です。失踪防止は単なるリスク管理ではなく、外国人材が安心して働く環境を整備することで、企業の人材確保と生産性向上につながります。
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