日本の人手不足に悩む企業にとって、外国人材の採用は有効な選択肢の一つです。外国人材の活用は、ビジネスの新たな可能性を紹介し、企業の成長に貢献します。彼らが持つ多様なスキルや視点は、新たなイノベーションを生み出し、企業の競争力を高める原動力にもなります。
特に、少子高齢化が進行し労働力人口が減少する現在の日本において、外国人材は国内市場の活性化だけでなく、グローバル市場での競争力維持にも不可欠な存在です。しかし、外国人を雇用するには「就労ビザ(査証)」の取得が不可欠であり、その手続きの流れや制度を正しく理解していないと、不法就労などのリスクに繋がる可能性があります。
本記事では、就労ビザの取得方法から実務での活用まで、企業経営者が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。これにより、持続可能な外国人雇用を強化し、安定した事業運営を行うサポートとなります。
就労ビザとは何か|制度の基本と目的
日本で外国人が働く上で「就労ビザ」という言葉は頻繁に用いられますが、その法的定義や、なぜ取得が不可欠なのかについて、正しく理解している企業は案外少ないかもしれません。
このセクションでは、就労ビザの概念を明確にし、混同されがちな「ビザ」と「在留資格」の違いを解説します。また、外国人を雇用する企業が果たすべき責任についても詳しく触れ、合法かつ円滑な外国人雇用を実現するための基礎知識を提供します。
就労ビザの定義と在留資格との違い
日本において、「ビザ(査証)」と「在留資格」は混同されがちですが、明確に異なる概念です。ビザは、日本に入国するための許可証であり、海外の日本大使館や領事館で発給を受けるものです。これは、空港での入国審査を通過する際に必要とされます。一方、在留資格は、日本に滞在し、特定の活動を行うための法的根拠であり、「就労可能な活動範囲」を定めたものです。
外国人が日本で合法的に働くためには、「就労可能な在留資格」を適法に取得しなければなりません。この就労可能な在留資格を一般的に「就労ビザ」と呼びます。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は、通訳やシステム開発といった専門的な業務に従事することが認められており、各在留資格によって活動の範囲が厳密に定められています。特定の目的のために与えられるこれらの資格は、外国人が日本で行う活動の種類と期間を制限します。本記事の目的は、この「就労ビザ」に関する知識を深めることにあります。
就労ビザが必要な理由と企業の責任
外国人が日本で働くためには、出入国在留管理庁が定めた活動範囲内で就労する必要があります。企業は、雇用する外国人がその在留資格で認められた業務内容に従事するのかを、雇用前に確認する義務があります。この確認を怠り、規定に違反した場合、企業側にも「不法就労助長罪」として罰則が科される可能性があり、重大な問題となります。
過去には報道された事例も多く、雇用主としての責任を果たすことは、法的リスクを避ける上で極めて重要な点です。この理由は、外国人労働者の不適切な就労を防ぎ、日本の労働市場の秩序を維持するためです。法令に基づいた適正な管理が不可欠です。企業が外国人を採用する際は、単に人材を得るだけでなく、日本の法律を遵守し、外国人本人の権利を守るという責任を負います。
「少子高齢化による人手不足が深刻化し、事業継続が危うい…」「外国人材の雇用を検討しているが、就労ビザの申請は複雑で何から手をつければいいのかわからない」「不法就労のリスクや、雇用後の管理についても不安がある」もしあなたがこの[…]
外国人雇用の前に確認すべき基礎知識
外国人材の雇用は、企業の国際競争力を高め、多様な視点を取り入れる上で大きなメリットがあります。しかし、採用活動を始める前に、日本の法令に基づいた外国人雇用に関する基礎知識をしっかりと身につけておくことが不可欠です。
特に、在留カードの内容確認や適切な雇用契約の締結は、不法就労のリスクを回避し、企業と外国人双方にとって安全で安定した関係を築くための最初のステップとなります。
在留カード・在留期間の確認方法
外国人を雇用する際は、まず在留カードの内容を確認することが必須です。在留カードには、在留資格、在留期間(在留期限)、資格外活動許可の有無などが記載されています。
特に「留学」や「家族滞在」などの在留資格を持つ者は、原則として就労が制限されており、許可がない場合は「資格外活動」となり、不法就労に該当します。例えば、留学生がアルバイトを行う場合、週28時間以内という制限があるため、その確認も重要です。在留カードの裏面には「資格外活動許可」の記載がある場合もあるので、両面を確実に確認します。
また、「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者等」といった身分・地位に基づいた在留資格を持つ外国人は、原則として活動内容に制限がなく、日本人と同じ条件で働くことが可能です。これらの情報は、外国人材を雇用する上で必要不可欠な知識となります。詳細な情報は、出入国在留管理庁のトップページや関連サイトのページでご覧いただくことをお勧めいたします。
近年では、在留カードの偽造事例も報告されており、雇用する際には、在留カード番号の確認や、出入国在留管理庁のウェブサイトで提供されている「在留カード等読取アプリケーション」などを活用し、カードの有効性を確認することも強く推奨されます。この確認作業を怠ると、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、注意が必要です。
雇用契約のポイント
外国人労働者との雇用契約には、日本人と同じ労働条件を保証する必要があります。雇用契約書には、以下の情報を詳細に記載するのが一般的です。
業務内容 | 従事する具体的な職種と業務範囲を明記します。 例えば、技術職であれば具体的なプログラミング言語や開発内容、国際業務であれば担当する国や地域、コミュニケーション手段などを詳しく記載します。 この内容は、外国人本人の在留資格で許可された活動と一致している必要があります。 |
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就業場所 | 実際の勤務先と、転勤の可能性がある場合はその旨も記載します。 複数の勤務先がある場合は、全てを記載することが求められます。 |
労働時間 | 勤務時間や休憩、休日に関する規定(法定労働時間以内であること、時間外労働や休日労働の条件などを明確にします)。 アルバイトの場合は、制限時間(週28時間)を厳守する必要があります。 |
賃金(給与) | 報酬額、計算方法、支払い方法(口座振り込みが一般的です)。最低賃金以上の設定はもちろん、日本人従業員と同じ条件を保証することが求められます。 報酬が外国人本人の学歴や経験に応じて、適切な水準であることも審査のポイントです。 |
契約期間 | 雇用期間(期間の定めがある場合は、更新の有無や更新基準も記載します)。 更新の可能性がある場合は、その条件も明確にします。 |
これらが不十分な場合、就労ビザの申請や更新に悪影響を与える恐れがあります。企業は、適切な労働条件を提供し、書面での契約を確実に行う義務があります。雇用契約書は、日本語と外国人労働者の母国語または英語を併記するなど、双方の理解を深めるための工夫も重要です。これにより、将来的な問題やトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
近年、日本では少子高齢化が加速し、深刻な人手不足が多くの業界で顕在化しています。建設業、介護、製造業、農業などを中心に、国内の労働力だけでは人材を確保することが難しい状況となっています。そのため、外国人労働者の受け入れが急速に進んでいます。[…]
就労ビザの取得方法と手続きの流れ
外国人材を日本に迎え入れる上で、就労ビザの取得は避けて通れない重要なプロセスです。この手続きは、複数のステップを経て進行し、それぞれにおいて適切な書類の準備とタイミングが求められます。
ここでは、外国人本人が海外にいる場合の「在留資格認定証明書」の申請から、来日後の各種届出に至るまで、就労ビザ取得の一連の流れを具体的に解説し、企業がスムーズに手続きを進めるためのロードマップを示します。
ステップ①:在留資格認定証明書の申請
外国人本人が海外にいる場合、まず雇用する企業(勤務先)が「在留資格認定証明書(COE)」を、出入国在留管理庁(入管局)に申請します。この証明書は、日本に入国し、特定の在留資格で活動することをあらかじめ認めるものであり、本人が現地の日本大使館でビザ申請を行う際に提出する重要書類となります。
この作業には、多くの手間と時間がかかることがあります。COEの審査期間は、申請する在留資格の種類や、出入国在留管理庁の混雑状況、提出書類の不備の有無によって異なりますが、通常1ヶ月から3ヶ月程度を要します。現在、オンラインでの申請も可能になっており、企業の担当者が受付時間を気にせず手続きを行えるようになっています。
必要書類には以下が含まれます。
項目 | 概要 |
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在留資格認定証明書交付申請書 | 出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできます。 本人の学歴、職歴、日本での活動内容などを詳細に記載します。 |
雇用契約書の写し | 業務内容が在留資格と関連していることを示します。 具体的な職務内容説明書を添付することも推奨されます。 |
会社案内 登記簿謄本(3ヶ月以内) 直近の決算報告書等 | 会社の概要や経営状況を示すための資料です。企業の安定性や継続性を証明するために重要です。 事業の概要や今後の展望を分かりやすく記載することで、審査をスムーズに進める可能性が高まります。 |
この申請は、ビザ取得プロセスの最初の重要なステップであり、適切な書類の作成と送付、提出が成功の鍵を握ります。申請が不許可となった場合、その理由が通知されますので、それを踏まえて再申請を検討することも可能です。不許可の理由が明確でない場合や、専門的な知識が必要な場合は、行政書士などの専門家への相談を強くお勧めいたします。
ステップ②:ビザ申請・発給手続き
在留資格認定証明書(COE)を受け取ったら、外国人本人はパスポートや証明写真、申請書、そしてCOEの原本等、必要とされる書類を揃え、現地の日本大使館または領事館でビザを申請します。通常、ビザの発給には数日〜2週間程度を要することが一般的ですが、申請先の機関や管轄地域、時期、個別のケースによって期間は異なる可能性があります。事前に該当する日本大使館のウェブサイトのページで詳細を確認することが重要です。
一部の国や在留資格では、ビザ申請時に面接が行われることもあります。本人は、審査の結果としてビザ発給の通知を受け取った後、パスポートに貼付されたビザを確認し、日本への入国が可能となります。この際に入国審査官が在留カードを発行します。
ステップ③:来日後の各種届出と管理手続き
外国人が日本に入国したら、雇用主である企業もサポートを行い、以下の手続きを速やかに行う必要があります。
項目 | 概要 |
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市区町村での住民登録(転入届出) | 来日後14日以内に行うことが法律で義務付けられています。 転入の際には、在留カードが必要です。 |
健康保険・年金加入 | 日本での生活を支える上で不可欠な社会保障制度への加入手続きです。 企業は被雇用者として外国人本人を加入させる義務があります。 |
銀行口座開設 | 給与の受け取りに必要です。 銀行によっては開設に一定期間の日本滞在経験が必要な場合もありますので、事前に確認しておくとスムーズです。 |
雇用保険・所得税関連の届出 | ハローワークや税務署への届出を含みます。 |
その他 | 必要に応じて住居探しのサポート、日本の生活習慣に関する教育、地域コミュニティへの参加促進、家族滞在ビザを持つ配偶者や子どもの教育・生活支援等も行うことで、外国人本人の滞在の不安を軽減し、仕事への集中力を高めることができます。 |
雇用主としては、これらの手続きに関する情報提供やサポート体制を整備しておくことが、外国人材の円滑な受け入れと定着に繋がります。不明な点があれば、関係省庁の担当者に電話で確認するのも良いでしょう。
外国人の就労可能なビザの種類と違い
日本で就労可能な在留資格は多岐にわたり、外国人が従事する業務内容や、その本人が有する学歴・職歴・経験によって、適切なビザの種類が異なります。企業が外国人材を雇用する際には、その業務内容に合致した在留資格を正確に理解し、申請することが重要です。
このセクションでは、一般的な「技術・人文知識・国際業務」ビザから、特定分野の人手不足に対応する「特定技能」ビザ、そして「技能」「経営管理」「企業内転勤」ビザなど、主要な就労可能な在留資格の種類とその特徴、違いについて詳しく解説します。
技術・人文知識・国際業務ビザ
主に大学卒業レベル以上の知識や技能を持つ外国人が対象となる在留資格です。具体的には、通訳、翻訳、研究、マーケティング、デザイナー、システムエンジニア、教師など、専門的かつ技術的な業務、または人文科学の知識や国際的な感性を要する業務が該当します。本人の大学や専門学校、高等学校で学んだ分野と、日本で従事する業務内容との関連性が重視され、その知識を活かせる仕事であることが要件となります。
例えば、情報工学を専攻した人はシステム開発、経済学を専攻した人はマーケティングや企画職、日本文学を専攻した人は通訳や国際交流に関わる業務が可能です。教授や教育といった在留資格は、この「技術・人文知識・国際業務」とは異なる専門性を持ちます。
特定技能ビザ(1号・2号)
特定技能ビザは、日本の人手不足が深刻な16分野(介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)で即戦力となる外国人を対象とした制度です。
特定技能1号は、日本語能力試験(N4以上が目安)と分野ごとの技能評価試験の合格が必要であり、一定の技能水準が求められます。在留期間は通算最長5年で、原則として転職は同じ分野内で認められています。
特定技能2号は、さらに高度な技能と実務経験を有する者が対象で、在留期間に上限がなく、永住申請も視野に入れることができます。2号の対象分野は1号よりも限定されており、2025年時点で11分野が認められています。
特定技能制度は、これらの分野における労働力不足の解消を目的としています。
特定技能1号で外国人を雇用する場合、受入れ企業は「登録支援機関」に依頼し、生活支援や就労に関する管理を行ってもらうことが義務付けられています。この支援体制は、外国人本人が日本で安定して働き、生活に順応するために極めて重要です。
技能・経営管理・企業内転勤ビザ
種類 | 概要 |
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技能ビザ | 外国料理の調理師(特に外国料理の専門家)や建築技術者など、特定の熟練技能を要する職種に適用されます。 その技能は、一定期間の実務経験によって証明される必要があります。 例えば、中国料理の調理師であれば10年以上の経験が求められることがあります。 |
経営管理ビザ | 外国人が日本で会社を設立し、その事業を経営・管理する際に必要となる在留資格です。 資本金500万円以上の投資や、事業所の確保、具体的な事業計画書の提出が要件となります。 会計を担当する者も含まれることがあります。事業の実現性、継続性、安定性が審査の重要なポイントとなります。 |
企業内転勤ビザ | 海外にある本社や支店から、日本の支社・事業所へ転勤する際に使用される在留資格です。 転勤前の所属企業での一定期間の勤務経験(多くは1年以上)が要件となります。 この資格は、企業グループ内での人材ローテーションを円滑に行うために活用されます。 |
この他にも、興行(歌手、ダンサーなど)、医療(医師、看護師など)、芸術(画家、彫刻家など)、教授(大学教授など)、宗教(宣教師など)、文化活動、スポーツ選手など、多種多様な就労可能な在留資格が存在し、それぞれの活動範囲が法令に基づいて定められています。
一覧として、出入国在留管理庁のウェブサイトのページで確認できます。現在の外国人雇用の状況に応じて、新たな種類の在留資格が追加される可能性もありますので、最新情報を常に確認することが重要です。
就労ビザ取得に必要な書類と作成ポイント
就労ビザの申請プロセスにおいて、最も重要かつ時間を要するのが、必要な書類の準備と作成です。提出書類の正確性や網羅性は、審査の期間や結果に大きく影響を与えるため、細心の注意を払う必要があります。
特に、雇用契約の内容や企業の安定性、外国人本人の学歴・職歴を証明する書類は、審査官が在留資格の要件を満たしているか判断するための重要な根拠となります。ここでは、主要な申請書類の種類と、それぞれの作成における具体的なポイント、そして注意すべき点について解説します。
雇用契約書・職務内容説明書
雇用契約書と職務内容説明書は、就労内容の具体性と、その業務が申請する在留資格に適合していることを明確に示している必要があります。特に、大学の専攻分野と従事する業務の関連性や、専門的知識を活かす職種であることを分かりやすく記載し、矛盾がないよう整合性を持たせることが重要です。
雇用契約書は、日本の労働基準法に準拠し、就労条件明示書の内容を網羅することが求められます。これらの書類は、外国人本人が日本で働く仕事の内容を明確にし、雇用主との契約関係を証明する最も重要な書類となります。
会社関係書類
以下の会社関係書類は、企業の経営状況や雇用体制を示すために必要です。
項目 | 概要 |
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登記簿謄本 (発行から3ヶ月以内) | 会社の概要を証明します。 |
直近の決算報告書 (会計士作成のものなど) | 企業の財政状態と安定性を証明します。 会社の規模や事業の継続性を審査官が確認するための重要な資料です。 |
会社案内パンフレットや ウェブサイト資料 | 事業内容や企業規模を紹介します。 企業の活動が多岐にわたる場合は、関連する事業の詳細を記載することで、外国人本人の業務内容との関連性をより明確にできます。 |
法人税の納税証明書等 | – |
これらの資料は、会社の事業の実態や継続性、安定性を証明し、在留資格の審査通過率を高めるために不可欠な情報となります。特に、新規設立の会社の場合、今後の事業計画書や、人材を雇用する必要性についての詳細な説明書類を添付することが求められる場合があります。
本人確認書類・経歴証明
外国人本人の証明書類として以下が必要です。
項目 | 概要 |
---|---|
最終学歴の卒業証明書・成績証明書 (必要に応じて翻訳付き) | 大学院修了者の場合は、修士または博士の証明書を提出します。 |
職歴証明書 | これまでの実務経験を示すものであり、従事した仕事の内容や期間を詳細に記載します。 |
パスポートコピー | 有効期限に注意します。 |
証明写真 | 縦4cm×横3cm、3ヶ月以内撮影のものを準備します。 |
学歴や職歴は、申請する在留資格の要件を満たしているかを確認するための重要な資料です。海外で取得した書類は、日本語への翻訳と、必要に応じて公証人役場での公証が求められることがあります。提出書類の不備は審査期間の長期化や不許可の原因となるため、入念な確認が必要です。
外国人雇用時の注意点と法律上のリスク
外国人材の雇用は、企業に新たな可能性をもたらしますが、同時に日本の出入国管理法や労働関連法規の遵守が厳しく求められます。特に、外国人本人の「資格外活動」や、それが引き起こす「不法就労」は、企業にとって社会的信用を失い、法的罰則の対象となる重大なリスクです。
このセクションでは、企業が外国人材を雇用する際に特に注意すべき法的境界線と、就労ビザの更新・変更における留意事項を明確にし、リスクを回避しながら外国人材を適切に管理する方法について解説します。
資格外活動と不法就労の境界線
在留資格で認められていない職種に外国人を就かせることは「資格外活動」となり、資格外活動許可がない場合は「不法就労」に該当します。企業側も「不法就労助長罪」で罰せられる可能性があるため、外国人雇用においては慎重な確認が必要です。不法就労は、企業にとって社会的信用を失う大きなリスクであり、外国人本人も強制退去の対象となります。
この範囲を管理することは、企業の責任の中で極めて重要です。雇用主は、外国人本人が許可された活動範囲を逸脱しないよう、定期的な確認を行う義務があります。加えて、労働基準法や最低賃金法など、日本の労働関連法規を遵守することも企業に課せられた重要な責任です。外国人労働者に対する差別的な処遇や、給与の不払いといった問題は、法令違反に該当し、企業の評判を著しく損ねる可能性があるため、細心の注意を払う必要があります。
就労ビザ更新・変更の注意事項
雇用契約の内容や職種が変更された場合、または現在の在留資格の在留期間が満了に近づいた場合、「在留資格変更許可申請」または「在留期間更新許可申請」の手続きを行う必要があります。在留期間を過ぎると不法滞在扱いとなるため、企業側が外国人材の在留期間を常に管理し、適切なタイミングで更新や変更のサポートを行うことが非常に重要です。事前に準備を進めることで、不測の事態を避けることができます。
これらの申請が不許可となった場合、日本での滞在が不可能となる可能性もありますので、専門家への相談を強くお勧めいたします。出入国在留管理庁の審査は、期間を要する場合が多く、余裕を持った申請が不可欠です。特に、在留資格の変更を伴う場合は、新たな職種が本人の学歴や経験に適合しているかを厳しく問われるため、慎重な準備が求められます。
近年、少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化する中で、グローバル人材、特に外国人労働者の活用が多くの日本企業にとって喫緊の課題となっています。多様な知識や文化を持つ外国人材を受け入れることは、企業の競争力向上やイノベーション創出につながる一方で[…]
専門家との連携と活用のすすめ
外国人雇用の手続きは、多岐にわたる法令や複雑な要件が絡み合うため、企業が自社のみで完璧に対応することは容易ではありません。特に、就労ビザの申請や更新、各種届出においては、専門的な知識と経験を持つ行政書士などのサポートが非常に有効です。
このセクションでは、複雑な手続きを円滑に進め、法令遵守を確実にするために、専門家と連携することのメリットを解説します。また、外国人材の定着率向上に向けた、企業内での受け入れ体制づくりの重要性についても触れます。
行政書士への相談で得られるメリット
複雑で難解な法令に基づいたビザ申請手続きは、専門家である行政書士に相談し、依頼することで、大きなメリットを得られます。行政書士は、ビザ申請書類の作成や出入国在留管理庁への提出代行を専門としており、ミスの防止や審査落ちのリスク軽減に繋がります。初めての外国人採用や、ケースごとに異なる複雑な手続きについても、行政書士の知識と経験が役立ちます。
多くの行政書士事務所が外国人雇用に関するコンサルティングサービスを提供しており、無料相談を受け付けている事務所も多く、まずは気軽にお問い合わせいただくことを推奨いたします。これにより、必要な情報をもらうことができ、安心して手続きを進めることができます。外国人雇用の専門家である行政書士との連携は、企業の法令遵守とスムーズな人材受け入れに貢献します。また、不許可の原因となった理由の分析や、再申請に向けた戦略立案においても、専門的な知見を得ることが可能です。
自社での人材受け入れ体制づくり
外国人材の定着率を高め、トラブルを防止するためには、自社での人材受け入れ体制づくりも不可欠です。言語・文化面での支援(例として日本語学習の機会提供や語学サポート)、生活インフラの整備(住居の紹介、携帯電話の契約サポート)、教育プログラムの実施などを社内制度として整備することが効果的です。これにより、外国人材は安心して働くことが可能となり、企業にとっても長期的な視点で優秀な人材を確保することに繋がります。
企業内に外国人材の担当部署や担当者を設けることも有効です。各段階でのサポート体制を確立することで、外国人材の満足度と定着率が向上します。生活面でのサポートは、外国人本人が日本での生活に馴染み、仕事に集中するための重要な要素となります。例えば、入社時にオリエンテーションを行い、日本の生活習慣や企業文化について解説する機会を設けることで、スムーズな移行を促すことができます。
よくある質問とケース別の対応方法
外国人雇用を検討・実施する企業からは、その具体的な状況に応じて様々な疑問や課題が寄せられます。特に、留学生を正社員として雇用するケースや、すでに日本で働く外国人が転職を希望する場合、また技能実習生との制度上の違いなど、個別の状況に応じた適切な対応が求められます。
このセクションでは、現場でよく直面するこれらの疑問点について、具体的なケーススタディを交えながら、その対応方法や必要な手続きをわかりやすく解説します。
留学生をアルバイトから正社員にしたい
「留学」の在留資格を持つ留学生を正社員として雇用する場合、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更する必要があります。大学卒業証明書、成績証明書、雇用契約書などを揃えて申請を行い、本人の学歴や職歴が変更後の在留資格の要件に該当しているかを確認することが重要です。この変更は、卒業後すぐの就職を検討する中で一般的に見られるケースです。
この手続きは、専門知識を要するため、行政書士への相談も有効です。申請の際には、留学生が大学で学んだ分野と、就職して従事する業務の関連性を具体的に証明する必要があります。加えて、留学生が日本で得た資格や経験も、審査において有利に働く可能性があります。
転職したい外国人が相談に来たら?
現在日本で働く外国人が転職を希望し、相談に来た場合、転職先での業務内容が現在の在留資格の範囲内で認められているかを確認することが重要です。もし業務内容が大きく異なるなら、「在留資格変更許可申請」が必須となります。就労開始前に必ず変更許可を得るよう、外国人本人に注意を促します。許可を得ないまま就労を開始すると、不法就労となる理由を説明し、慎重な対応を促すことが重要です。
報酬や仕事の条件も審査の対象となりますので、新たな雇用契約書の内容も慎重に確認します。転職の場合も、企業側は外国人本人の在留資格と在留期間を確認し、適切な管理を行う義務があります。前職での就労状況や、転職の理由なども審査に影響を与える可能性があるため、本人から詳細な情報をヒアリングすることが推奨されます。
技能実習生との違いとは?
技能実習制度は、開発途上国への技能移転が主な目的であり、原則として転職はできません。在留期間も最長5年など制限があります。一方、特定技能ビザは日本の人手不足を解消するための「就労」を目的とした制度であり、同じ分野内であれば転職や更新が可能です。
制度の目的や内容、適用される法律上の制限が大きく異なるため、混同しないよう理解が必要です。技能実習は「技能移転」を目的としており、それ以外の活動は制限されます。特定技能は、外国人本人が特定分野で働くことを可能にし、日本でのキャリア形成を支援する側面も持ち合わせています。
まとめ|就労ビザ取得で外国人雇用を強化しよう
上記で解説したように、日本の人手不足解消において、外国人雇用は今や不可欠な手段です。彼らの存在は、単なる労働力の補填にとどまらず、企業の多様性を促進し、国際的な視点を取り入れる上で大きなプラスとなります。
本記事で解説したように、制度を正しく理解し、就労ビザの取得から管理までを丁寧に行うことで、企業にとっても外国人材にとっても安心して働ける環境が整います。行政書士など専門家のサポートも活用しながら、適切な情報に基づいて、持続可能な雇用体制を構築し、貴社の事業をさらに強化していきます。
外国人人材の雇用でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽に「人材カフェ」にご相談ください。様々な職種の外国人材をご紹介しています。外国人材は、日本の社会と経済の今後を支える重要な存在であり、彼らを適切に雇用し、活躍できる環境を整えることが、企業と日本全体の発展に繋がります。