「少子高齢化による人手不足が深刻化し、事業継続が危うい…」
「外国人材の雇用を検討しているが、就労ビザの申請は複雑で何から手をつければいいのかわからない」
「不法就労のリスクや、雇用後の管理についても不安がある」
もしあなたがこのようなお悩みを抱えている企業経営者様なら、この記事はきっとお役に立ちます。
近年、日本国内の労働力不足を補う方法として、外国人材の雇用が注目されています。しかし、外国人雇用には、就労ビザの取得から、雇用後の適切な管理まで、専門的な知識と煩雑な手続きが必要です。誤った認識や不適切な対応は、会社の信頼失墜や罰則につながる可能性もあります。
この記事では、外国人材を雇用する上で必要不可欠な就労ビザの取得方法から、具体的な申請の流れ、見落としがちな注意点、さらには雇用後の適切な管理まで、企業経営者様が知っておくべきすべての情報を網羅的に解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは外国人雇用の全体像を把握し、自信を持って外国人材活用の一歩を踏み出せるようになっているでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
就労ビザ取得の基礎知識:外国人雇用で必要なこと
外国人材を日本で雇用し、事業活動に従事してもらうためには、その活動内容に応じた在留資格(一般的に「就労ビザ」と呼ばれます)を取得しなくてはなりません。ここでは、まず就労ビザの基本から理解を深めていきましょう。
就労ビザとは?在留資格との違いを明確に理解する
「ビザ」と「在留資格」という言葉は混同されがちですが、実はその意味合いは異なります。
ビザ(査証)は、海外から日本に入国するための「入国許可証」のようなものです。パスポートに貼付され、入国審査官に提示されます。一方、在留資格とは、日本に滞在し、特定の活動(例:就労、留学、家族滞在など)を行うことを許可する「身分や活動内容の資格」です。現在、日本に滞在するすべての外国人(短期滞在者を除く)が、いずれかの在留資格を持っています。
つまり、外国人が日本で働く場合、まず就労を目的とした在留資格を得てから、その在留資格に基づいて日本に入国するためにビザを取得するというのが一般的な流れです。通常、企業が外国人材を雇用する際には、この「就労を目的とした在留資格」の申請をサポートすることになります。
就労ビザの種類と対象職種を詳しく解説
就労ビザ(就労系在留資格)には様々な種類があり、それぞれ従事できる業務や取得条件が異なります。雇用したい職種や本人の経歴によって適切な在留資格を選ぶ必要があるため、ここでは代表的なものを紹介します。
技術・人文知識・国際業務
企業の営業、経理、企画、ITエンジニア、通訳といった専門職・技術職が対象です。
- 主な要件:
- 関連分野の大学を卒業、または10年以上の実務経験
- 日本人従業員と同等額以上の報酬
特定技能
農業、建設、介護、外食など、人手不足が深刻な16分野で即戦力として働く人材が対象です。
- 主な要件:
- 分野ごとの技能試験と日本語能力試験に合格、または技能実習2号を修了
- 日本人従業員と同等額以上の報酬
※多くの場合、登録支援機関によるサポートが必要です。
企業内転勤
海外の拠点(本社、支社、関連会社)から日本の事業所へ転勤する専門職が対象です。
- 主な要件:
- 転勤前に1年以上の継続勤務経験
- 日本人従業員と同等額以上の報酬
経営・管理
日本で会社を設立し、事業の経営や管理を行う者が対象です。
- 主な要件:
- 事業所が確保されていること
- 資本金が500万円以上、または常勤職員が2名以上いること
- 事業計画に具体性と継続性があること
技能
中華料理のコック、外国料理の調理師、パイロット、スポーツ指導者など、熟練した技能を要する業務が対象です。
- 主な要件:
- 原則10年以上の実務経験(一部職種を除く)
- 日本人従業員と同等額以上の報酬
特定活動
ワーキングホリデーやインターンシップなど、上記のいずれにも該当しない特別な活動が対象です。取得条件は個別の活動内容によって定められます。
これらの在留資格の審査は、会社の規模や事業内容、外国人材本人の経歴などに基づき、個別に判断されます。「この条件さえ満たせば必ず許可される」というものではないため、専門家の意見を求めるなど、事前の確認が不可欠です。
就労ビザの取得条件とは?企業が確認すべきポイント
就労ビザの取得には、大きく分けて以下の3つの条件を満たす必要があります。これらは出入国在留管理庁による審査の重要なポイントとなります。
第一に、学歴・職歴要件が挙げられます。多くの就労系在留資格、特に「技術・人文知識・国際業務」の場合、申請する外国人材が、従事する業務に関連する分野の大学を卒業しているか、あるいは一定期間の実務経験(10年以上など)を持っていることが求められます。専門学校卒の場合も、専攻分野が業務内容と関連している必要があります。一方、特定技能の場合は、学歴要件はなく、技能試験合格や技能実習2号修了が求められる点が異なります。
第二に、職務内容の相当性も重要な確認事項です。在留資格で許可されている活動範囲内の業務内容であるか、そしてその者の学歴や職歴にふさわしい内容であるかが確認されます。例えば、「技術・人文知識・国際業務」で雇用するのに、単純労働に従事させる場合は許可されません。
第三の条件は、報酬要件です。外国人材に支払う報酬が、日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上であることが求められます。この制度は、不当な労働条件で外国人を雇い、労働市場を歪めることを防ぐためのものであり、生活保護を受けるような低賃金では許可されません。
これらの条件は、会社の規模や事業内容、外国人材の経歴によって個別に審査されるため、詳細な情報を確認し、不確実な点は専門家に相談するなどの対応が重要です。
企業の人手不足が深刻化するなか、外国人材の活用は多くの業界で注目を集めています。特に製造業や介護、IT、飲食といった現場では、即戦力となる外国人労働者の採用が進んでいます。こうした動きは報道でも頻繁に取り上げられるようになり、外国人材が日本[…]
就労ビザ申請:必要な書類と具体的な方法
それでは、実際に就労ビザの申請方法と、その際に必要となる書類について具体的に見ていきましょう。
申請から交付までの基本的な流れと期間の目安
外国人材を海外から招き入れる場合、最も一般的な流れは「在留資格認定証明書交付申請」を行うことです。
まず、会社は外国人材との間で、就労内容、給与、勤務期間などを明記した雇用契約を締結します。この契約書は、後の申請で重要な書類となります。次に、日本にいる企業側が、外国人材の代理人として、その外国人材が日本で行う活動内容に応じた在留資格の認定証明書を出入国在留管理庁に申請します。この申請は、外国人材が実際に勤務する会社の所在地を管轄する出入国在留管理庁(または地方出入国在留管理局)に提出します。必要となる書類は以下で詳細を解説しますが、これらの書類を準備し提出します。標準審査期間は1ヶ月から3ヶ月程度ですが、ケースによってはそれ以上かかる可能性もあります。
審査に合格すると、出入国在留管理庁から「在留資格認定証明書」が企業(または代理人)へ発行されます。これは、その外国人が日本で行う活動内容が、特定の在留資格に該当することを証明する文書です。交付された認定証明書は、海外にいる外国人本人に送付されます。この際、書類を封筒に入れ、追跡可能な方法で送付することが推奨されます。また、申請内容によっては、追加資料の提出を求められる場合があり、その際の返信は迅速に行う必要があります。
その後、外国人本人が、在留資格認定証明書とパスポート、必要書類を持って、自らの国にある日本の大使館または総領事館でビザ(査証)の申請を行います。ビザが発給されると、外国人本人は日本へ入国できます。入国審査時にパスポートとビザを提示し、上陸許可を受けると、在留カードが発行され、日本での正規の滞在が可能となります。
すでに日本に滞在している外国人(例えば、留学生、他の就労ビザ保持者で転職する者など)の場合は、「在留資格変更許可申請」や「在留期間更新許可申請」となります。この場合は日本国内での手続きとなるため、流れが一部異なりますが、申請の種類が異なる点に注意が必要です。
参考:
出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁 在留期間更新許可申請
就労ビザ申請に必要な書類一覧とその内容
就労ビザの申請では、数多くの書類を提出する必要があります。ここで紹介するのはあくまで主要な資料であり、会社の規模や業種、外国人材の経歴によって必要書類は異なります。申請前には、必ず出入国在留管理庁の公式サイト等で最新の情報を確認してください。
企業側が用意する主な書類一覧
企業は、事業の安定性や雇用契約の適正性を証明する書類を準備します。
項目 | 概要 |
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申請書類 |
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会社の基本情報を証明する書類 |
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経営状況を証明する書類 |
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雇用内容を説明する書類 |
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その他 |
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外国人本人側が用意する主な書類一覧
外国人本人は、自身の経歴や能力、身分を証明する書類を準備します。
項目 | 概要 |
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経歴を証明する書類 |
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身分を証明する書類 |
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能力を証明する書類(任意) |
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日本での実績を証明する書類(該当する場合) |
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書類準備における注意点
提出された書類は、審査官が外国人材の経歴、会社の状況、雇用契約の適正性を総合的に判断するための重要な情報源となります。書類に不備があると、審査が遅延したり、最悪の場合は不許可となったりする可能性もあります。そのため、全ての書類を正確に、かつ漏れなく準備することが極めて重要です。また、これらの文書には個人情報が多く含まれるため、個人情報保護の観点からも取り扱いに細心の注意を払う必要があります。
就労ビザ申請期間の目安と審査のポイント
就労ビザの申請期間は、申請する在留資格の種類、出入国在留管理庁の混雑状況、提出書類の完全性、会社の状況などによって大きく異なり、「〇日以内」と断言できるものではありません。
在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は1ヶ月から3ヶ月程度とされていますが、特に繁忙期や、提出書類に疑問点が多いケースでは4ヶ月以上かかることも珍しくありません。在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請の標準処理期間は2週間から2ヶ月程度とされていますが、こちらも状況により変動します。
審査のポイントとしては、主に以下の点が挙げられます。
第一に、外国人材の適格性が確認されます。これは、学歴や職歴が日本で行う業務内容と関連し、その業務を遂行するに足る専門性があるかどうかが問われます。また、過去に日本の法令違反がないか(不法滞在、不法就労など)も確認の対象となります。
第二に、企業の適格性も重要な審査ポイントです。外国人材を受け入れる会社に事業の安定性や継続性があるかどうかが確認されます。具体的には、会社の設立期間、経営状況(例えば、赤字が続いているか)、納税状況などが調査されます。さらに、外国人材に支払う報酬が、日本人と同等以上であり、安定した生活を送れる十分な給与であるかどうかも確認されます。外国人材の業務内容が、在留資格で認められている活動内容と一致しているか、そして不法就労助長のリスクがないかどうかも厳しく審査されます。
これらの審査ポイントをクリアするためには、提出書類に不備がないことはもちろん、会社の事業内容や外国人材の職務内容、報酬などを明確にし、一貫性のある情報を提供することが重要です。審査官は、提出書類から「この外国人が日本で合法的に、かつ安定して就労できるか」を総合的に判断します。
日本の人手不足に悩む企業にとって、外国人材の採用は有効な選択肢の一つです。外国人材の活用は、ビジネスの新たな可能性を紹介し、企業の成長に貢献します。彼らが持つ多様なスキルや視点は、新たなイノベーションを生み出し、企業の競争力を高める原動力に[…]
外国人雇用:見落としがちな注意点とリスク対策
就労ビザの申請は、単に書類を集めて提出すれば良いというものではありません。多くの企業が見落としがちなポイントや、不許可につながる注意点が多数存在します。
不許可になるケースとその理由の詳細な解説
多くの時間と手間をかけて申請しても、不許可になってしまうケースは少なくありません。ここでは、主な不許可理由と、その対策について詳細を解説いたします。
最も多い不許可理由の一つは、学歴・職歴と職務内容の不一致です。例えば、大学で経済学を専攻した外国人が、ITエンジニアとして申請する場合、IT関連の実務経験がなければ、関連性がないと判断され不許可になる可能性があります。この点をクリアするためには、外国人材の学歴や職歴と、雇用後の業務内容をしっかりと結びつけて説明する必要があります。実務経験がある場合は、職務経歴書で具体的に記載し、証明することが重要です。
次に、企業の安定性・継続性の問題も不許可につながる重要な点です。会社が設立間もない場合や、経営状況が芳しくない(赤字が続いているなど)場合、外国人材を継続的に雇用する能力がないと判断され、不許可になる可能性があります。設立間もない会社でも、事業計画の具体性や将来性、資金的な裏付けを明確に示し、健全な経営基盤があることを証明する必要があります。顧問税理士や社内の経理担当者に相談し、会社の財務状況が健全であることを証明できる書類を揃える必要があります。
報酬が不適切である点も大きな不許可理由です。外国人材への報酬が、日本人が同等の業務に従事する場合と比較して著しく低い場合は、不許可になります。外国人材が日本で生活できるだけの十分な給与が支払われるかどうかが厳しく確認されます。この点をクリアするためには、日本人社員の賃金規定や、同業他社の賃金水準を参考に、適切な報酬を設定することが重要です。雇用契約書に記載された給与額と、実際に支払われる給与額に乖離がないよう細心の注意を払う必要があります。
過去の法令違反も不許可の原因となります。外国人材本人が過去に日本での不法滞在や不法就労、交通違反など、入管関係の法令違反を含め行政処分や刑事罰を受けている場合は、原則として不許可となります。採用前に本人から十分なヒアリングを行い、過去の履歴に問題がないか確認する必要があります。
最後に、提出書類の不備や虚偽の情報の記載も不許可の理由となります。申請書以外にも、必要書類が不足していたり、記載内容に矛盾があったり、虚偽の情報を提出したりする場合は、当然ながら不許可となります。虚偽申請は悪質なケースでは法的措置の対象となります。書類は正確に、かつ漏れなく準備し、提出前に何度も確認してください。不安な場合は、行政書士などの専門家に依頼することも検討すべきです。
これらの不許可理由を理解し、事前に対策を講じることが、スムーズな就労ビザ取得への近道となります。
雇用契約・給与設定の重要性と注意点
外国人材を雇用する際の雇用契約は、就労ビザ申請において非常に重要な書類です。この契約書の内容が、出入国在留管理庁の審査に大きく影響する点を理解しておく必要があります。
職務内容の明確化は、雇用契約書に記載すべき最も重要な点の一つです。外国人材が具体的にどのような仕事に従事するのかを詳細に記載する必要があります。曖昧な表現では、在留資格で認められたものと一致しているかどうかが判断しづらくなります。勤務地も明確に記載し、複数の場所で勤務する場合は、主たる勤務先や移動の範囲なども記載すると良いです。
報酬額とその内訳も、詳細な記載が求められます。基本給はもちろん、手当(通勤手当、住宅手当など)や賞与の有無、計算方法なども具体的に記載し、月々の合計支給額が明確にわかるようにします。年収換算で、日本人と同等以上の給与であるかが確認されます。また、労働基準法に準拠した勤務時間や休日を記載することも重要です。有期雇用契約の場合は、契約期間も明記する必要があります。
特に、報酬に関しては、単に金額が高ければ良いというものではありません。「日本人が同等の業務に従事する場合と同等以上の報酬」という条件を満たす必要があります。これは、外国人材の給与が、日本人社員の給与水準と比較して不当に低いものではないかを確認するものです。会社内の賃金規定や、同業他社の賃金水準などを参考に、適正な給与額を設定する必要があります。
虚偽申請や不法就労のリスクと対策
外国人雇用において、最も避けるべきは「虚偽申請」と「不法就労」です。これらの行為は、企業にとって非常に大きなリスクを伴うため、十分な注意が必要です。
虚偽申請とは、申請書類に事実と異なる情報を記載したり、偽造書類を提出したりする行為を指します。このような行為は、不許可になるだけでなく、出入国管理法違反として罰則(懲役や罰金)が科せられる可能性があります。また、企業としての信用を失い、今後の外国人雇用が困難になります。
不法就労とは、就労許可を得ていない外国人を雇用したり、在留資格の範囲外で業務をさせる行為です。例としては、留学ビザ(資格外活動許可なし)の留学生をフルタイムで雇用するケースや、短期滞在ビザ(観光目的)の外国人を雇用するケースが挙げられます。また、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人に、コンビニのレジ打ちなど単純労働をさせる場合も、不法就労に該当します。このような不法就労は、出入国管理法違反となり、「不法就労助長罪」として企業や経営者が処罰の対象となります。3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられることがあり、その外国人材も強制退去の対象となります。
このようなリスクを回避するためには、採用前に必ず外国人材の在留カード(またはパスポート)を確認し、在留資格の種類と在留期間、就労の可否(就労制限の有無、資格外活動許可の有無)を徹底的に確認する必要があります。
特定技能ビザ活用のメリットと注意点
「特定技能」は、2019年に新設された在留資格で、人手不足が深刻な分野において即戦力となる外国人を雇用できる制度です。従来の就労ビザに比べて、幅広い職種での雇用が可能であり、企業にとって大きなメリットがあります。
特定技能ビザを活用するメリットは複数あります。まず、介護、農業、建設、外食など、これまで専門性が限定的で就労ビザの取得が難しかった分野で外国人を雇用できるようになります。これにより、多くの企業が抱える人手不足という課題に対応しやすくなります。また、特定技能の外国人は、業務に必要な技能水準と日本語能力を証明する試験に合格しているか、または技能実習を修了しているため、即戦力として期待できます。さらに、特定技能1号の在留期間は最長5年ですが、特定技能2号に移行できれば、在留期間の制限がなくなる点も大きな利点です。これは、事実上の永住に近い滞在が可能になることを意味します。
しかし、特定技能ビザの活用には注意点も存在します。特定技能外国人材を受け入れる企業(特定技能受入れ機関)には、その外国人が安定して日本で生活し、就労できるよう、様々な支援を行う義務があります。この支援内容は、入国前の情報提供(日本での生活情報など)から、空港への送迎、住居確保の支援、銀行口座開設、携帯電話契約の支援、日本語学習の機会提供、生活相談、苦情対応、そして定期的な面談(期間を定めて行い、状況を確認)まで多岐にわたります。これらの支援は、自社で行うか、「登録支援機関」に委託することが可能です。
また、特定技能外国人材の受け入れ計画や支援計画を出入国在留管理庁に提出し、認定を受ける必要があります。この資格認定のプロセスでは、受け入れ企業の体制も審査されます。受け入れ人数の上限も存在し、企業規模や分野によって上限が設けられている点も留意点です。さらに、特定技能の外国人材は、同一分野であれば転職が可能なため、定着のための工夫も必要となります。特定技能ビザは、人手不足解消の有力な選択肢ですが、その特徴と義務を十分に理解した上で活用することが重要です。
近年、日本では多くの産業分野で慢性的な人手不足が深刻な状況となっており、とりわけ介護・建設・農業・外食産業・製造業などの現場では、必要な人材を確保できないことが経営上のリスクとなっています。少子高齢化による労働人口の減少が背景にあることは言[…]
外国人雇用後の適切な在留管理とビザ更新
就労ビザを取得し、外国人材の雇用が始まれば終わりではありません。日本で彼らが安心して就労を継続できるよう、企業側には適切な在留管理とビザ更新のサポートが求められます。
在留期間の更新手続きとその要点
外国人材の在留期間は、在留資格によって異なりますが、一般的に1年、3年、5年のいずれかの期間が交付されます。この在留期間が満了する前に、「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。
この申請は、在留期間の満了日の3ヶ月前から可能です。申請の期間には余裕を持って行う必要があります。期間が短いと審査が間に合わず、不法滞在になってしまうリスクがあるため、事前の管理が重要です。
必要書類は、初回の申請と類似していますが、在留期間更新許可申請書、在留カード、パスポート、会社の登記事項証明書、直近の決算書類、納税証明書、外国人材の給与所得の源泉徴収票、雇用契約書などが主要な書類となります。業務内容や報酬に変化があった場合は、その旨を記載する必要がある点にも注意が必要です。
審査ポイントとしては、初回申請と同様に、会社の安定性・継続性、外国人材の職務内容の適正性、そして報酬の適正性が確認されます。加えて、これまで適法な在留を続けていたか、税金や年金等をきちんと納めているかなども確認されます。
更新手続きを忘れて期間を過ぎてしまうと、オーバーステイ(不法滞在)となり、罰則や強制送還の対象となります。外国人材だけでなく、会社にも責任が問われる可能性があるため、在留期間の管理は徹底して行うことが重要です。
在留カードの適切な管理と雇用主の義務
在留カードは、日本に3ヶ月以上滞在する外国人に対して交付される、身分証明書兼在留資格証明書です。外国人材の雇用後は、この在留カードの管理についても注意を払う必要があります。
外国人材には、在留カードを常に携帯する義務があります。この義務に違反した場合は、20万円以下の罰金が科せられることがあります。また、氏名、生年月日、国籍・地域、住居地などに変更があった場合は、所定の期間以内に出入国在留管理庁(住居地の場合は市区町村役場)へ届出を行う必要があります。
就労系の在留資格を持っている外国人が、会社を転職した場合は、新たな勤務先の情報を出入国在留管理庁に届け出る義務があります。この届出は、外国人材本人に義務付けられていますが、会社側も促すなどして確認をすることが望ましいです。この届出は、適正な在留管理と出入国の記録のために不可欠です。
さらに、外国人を雇用した企業側にも届出義務があります。外国人材の雇用(または離職)の際には、その旨を出入国在留管理庁へ届け出る義務があるのです(中長期在留者の受け入れに関する届出など)。これは雇用主の義務ですので、必ず行ってください。
在留カードの情報は、外国人材が日本で適法に就労できるかを判断する上で極めて重要な情報です。採用前はもちろん、雇用後も定期的に在留カードの確認を行い、在留期間が切れていないか、在留資格と業務内容が合致しているかを確認する習慣を身につけることが肝要です。
日本人社員との共存と企業内のサポート体制構築
外国人材の雇用は、単に人手不足を解消するだけでなく、会社の多様性を高め、新たな視点をもたらすメリットがあります。しかし、文化や習慣の違いから、日本人社員との間で誤解や摩擦が生じる可能性もあるため、適切なサポート体制の構築が重要です。
まず、外国人材が日本での生活にスムーズに慣れるよう、日本語学習の機会提供や、生活に必要な情報(ゴミの出し方、公共交通機関の利用方法、地域のルールなど)の提供を行うと良いです。相談窓口の設置や、通訳サービスの手配も有効な対応策となります。
日本人社員との共存のためには、文化理解の促進が欠かせません。外国人材だけでなく、日本人社員にも異文化理解を促す教育や研修などを実施し、多様な文化背景を持っている人々が共に働きやすい職場環境を作る努力が重要です。相互理解を深めることで、より良いチームワークが生まれます。
業務指示やルール、評価基準などは、外国人材にも理解できるよう、より明確に、簡潔に伝える必要があります。必要であれば、図やイラストを用いたり、やさしい日本語を使用したりする工夫も有効な方法です。
外国人材も日本人社員と同様に、キャリアアップやスキル向上の機会を求めるものです。彼らのモチベーションを維持し、長期的に会社に定着してもらうためにも、明確なキャリアパスや教育訓練の制度を提示することが望ましいです。
外国人材が安心して就労し、活躍できる環境を整備することは、会社全体の生産性向上にもつながります。人手不足の解決だけでなく、企業のグローバル化、国際競争力強化にも貢献します。
まとめ:就労ビザ取得と外国人雇用を成功させるために
外国人材の雇用は、深刻化する人手不足に悩む企業にとって、非常に有効な解決策となり得ます。しかし、そのためには就労ビザの取得から、申請方法、注意点、そして雇用後の適切な管理まで、多岐にわたる専門知識が必要となることをご理解いただけたことと思います。
この記事では、就労ビザとは何か、在留資格との違い、主要な就労系在留資格の種類と取得条件、就労ビザ取得のための具体的な申請方法と必要書類、審査のポイントと不許可になるケースについて解説いたしました。さらに、雇用契約や給与設定における注意点や、不法就労のリスク、特定技能ビザ活用のメリットと義務、雇用後の在留期間更新と在留カード管理の重要性、日本人社員との共存と企業内サポート体制の必要性についても説明を加えています。
外国人材を雇用するプロセスは複雑に感じるかもしれませんが、正しい知識を持って、一つひとつの手続きを丁寧に行えば、決して難しいことではありません。不明な点があれば、出入国在留管理庁の公式サイトのトップページから関連リンクを辿るか、専門家(行政書士など)に相談し、正確な情報を確認しながら進めることをお勧めします。スムーズな手続きのために、専門家への依頼も可能です。
外国人材の雇用は、企業の未来を拓く大きな可能性を秘めています。この記事が、貴社が外国人材を安心して雇用し、事業をさらに発展させるための一助となれば幸いです。
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