外国人社員を雇用する企業にとって、日本語能力は業務遂行の基盤となる重要な要素です。しかし、多くの人事担当者が「どのように日本語学習を支援すればよいのか」「適切な教材やサービスをどう選べばよいのか」といった課題に直面しています。外国人社員が日本語を効率よく習得できる環境を整えることは、彼らの定着率向上や業務パフォーマンスの改善に直結するでしょう。
本記事では、外国人社員が抱える日本語学習の課題から、無料・有料の教材選定、社内支援体制の構築方法、さらには日本語カフェなどの外部サービス活用まで、人事担当者が知っておくべき実践的な情報を包括的に解説します。
外国人社員が直面する日本語学習の課題

外国人社員の日本語学習を効果的に支援するには、まず彼らが実際にどのような困難に直面しているのかを理解する必要があります。日本語学習の課題は言語の習得だけでなく、業務環境や文化的背景とも深く関わっているため、企業側の適切な理解とサポートが不可欠です。
ここでは、外国人社員が抱える主な課題を3つの観点から整理しました。
ビジネス日本語と日常会話の違い
日常会話ができる外国人社員でも、ビジネスシーンで求められる日本語には苦労するケースが少なくありません。ビジネス日本語には独特のルールが存在し、習得には時間がかかります。
- 敬語の使い分け
- メールや報告書での書き言葉
- 会議での適切な発言方法
- 定型表現の理解と使用
- 尊敬語と謙譲語の区別
特に「お世話になっております」「ご確認のほどよろしくお願いいたします」といった定型表現は、日常会話では使用頻度が低いため、実務で初めて触れる外国人社員も多いでしょう。また、上司や取引先との会話では尊敬語と謙譲語を正しく使い分ける必要がありますが、この区別は母国語にない概念であることが多く、習得に時間がかかります。
業界特有の専門用語への対応
各業界には独自の専門用語が存在し、これらは一般的な日本語教材ではカバーされていません。外国人社員はこれらの用語を業務の中で覚えていく必要がありますが、体系的に学ぶ機会がないため、理解が断片的になりがちです。
| 業界 | 専門用語例 | 意味 |
|---|---|---|
| 製造業 | 段取り | 作業の準備や手順 |
| 仕掛品 | 製造途中の製品 | |
| 歩留まり | 製品の良品率 | |
| IT業界 | リリース | システムやアプリの公開 |
| デプロイ | システムの配置・展開 | |
| バグ | プログラムの不具合 | |
| 介護・医療 | バイタル | 生命徴候 |
| カンファレンス | 症例検討会 | |
| インシデント | 医療事故につながりかねない出来事 |
同じ言葉でも業界によって意味が異なる場合もあり、混乱の原因となっています。企業側が業界特有の用語集を作成するなど、専門用語の習得を支援する仕組みが求められるでしょう。
学習時間の確保と継続の難しさ
外国人社員の多くは、業務と日本語学習の両立に苦労しています。日中は通常業務に追われ、帰宅後は疲労で学習意欲が低下するという悪循環に陥りやすい状況です。
- 業務時間外での学習時間確保の難しさ
- 来日直後の生活環境への適応
- 短期間で成果が出ない焦り
- 明確な目標設定の不足
- 進捗確認の仕組みの欠如
特に来日直後は生活環境への適応にも時間を取られるため、計画的な学習時間の確保が困難になります。また、日本語学習は短期間で成果が出るものではなく、数ヶ月から数年単位での継続が必要です。
しかし、明確な目標設定や進捗確認の仕組みがないと、モチベーションを維持することが難しくなります。外国人社員が自主的に勉強する時間を確保できるよう、企業が業務時間内に学習時間を設けたり、定期的な評価制度を導入したりすることで、継続的な学習をサポートできるでしょう。
企業が選ぶべき日本語学習教材の種類と特徴

外国人社員の日本語学習を支援するには、適切な教材選びが重要です。現在、無料でダウンロードできるオンライン教材から企業向けの有料プログラムまで、多くの選択肢があります。
ここでは、それぞれの教材の特徴と活用方法を具体的に紹介し、企業の状況に応じた最適な選択をサポートします。
無料で活用できるオンライン教材の紹介
予算に制約がある企業や、まずは試験的に日本語学習支援を始めたい企業には、無料のオンライン教材が有効な選択肢となります。
| 教材名 | 提供元 | 主な特徴 | 対応言語 | おすすめ用途 |
|---|---|---|---|---|
| いろどり 生活の日本語 | 国際交流基金 |
| 15言語 |
|
| つながるひろがる にほんごでのくらし | 文部科学省 |
| 14言語 |
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| JFにほんごeラーニング みなと | 国際交流基金 |
| 多言語 |
|
| やさしい日本語Easy Japanese | NHK |
| 多言語 |
|
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これらの無料教材サイトを組み合わせることで、基礎から応用まで幅広い学習ニーズに対応できるでしょう。各サイトで提供される教材を探すことで、自社に最適な学習リソースを見つけることができます。
参考:
独立行政法人国際交流基金日本語国際センター いろどり生活の日本語
文部科学省 つながるひろがる にほんごでのくらし
国際交流基金関西国際センター JFにほんごeラーニング みなと
NHK WORLD JAPAN やさしい日本語Easy Japanese
企業向け有料教材の投資対効果
体系的かつ効率的な日本語学習を実現したい企業には、有料の企業向け教材が適しています。
| 比較項目 | 有料教材 | 無料教材 |
|---|---|---|
| 学習管理 | LMSによる進捗管理・理解度の一元管理が可能 | 個人任せ。企業側での管理は困難 |
| カリキュラム | ビジネス日本語に特化。業界別対応も可能 | 一般的な日本語学習が中心 |
| 実践性 | 営業・接客・製造現場など業務シーンを想定した練習 | 日常生活が中心 |
| サポート | 専門講師による指導・質問対応 | 基本的に自習形式 |
| 費用 | 初期投資が必要 | 無料 |
| 効果測定 | 客観的な評価・レポート機能あり | 自己評価のみ |
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初期投資は必要ですが、外国人社員の早期戦力化や離職率低下を考慮すると、十分な投資対効果が期待できます。特に複数の外国人社員を雇用している企業では、統一された教材で学習させることで、社内の日本語レベルを標準化できるメリットもあります。
レベル別・目的別教材の選び方
外国人社員の日本語能力は個人差が大きいため、レベルに応じた教材選びが学習効果を左右します。
| レベル | JLPT目安 | 推奨教材タイプ | 学習内容 | 選定ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 初級 | N5〜N4 |
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| 中級 | N3〜N2 |
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| 上級 | N1 |
|
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目的別の選び方
| 職種 | 推奨教材の特徴 |
|---|---|
| 接客業 | 顧客対応に特化した会話教材 |
| 事務職 | ビジネスメールや資料作成に焦点を当てた教材 |
| 技術職 | 専門用語と日本語を組み合わせた教材 |
| 製造業 | 現場で使う指示語や安全用語を重視した教材 |
教材選定時には、無料体験版やサンプルを確認し、実際の業務内容との親和性を検証することをおすすめします。また、各教材の公式サイトで検索機能を活用すれば、業種や目的に役立つ教材を効率的に探すことができるでしょう。
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効果的な日本語学習支援体制の構築方法

教材を提供するだけでは、外国人社員の日本語能力向上は実現しません。企業が組織として継続的にサポートする体制を整えることで、学習効果は大きく高まります。
ここでは、社内で実践できる具体的な支援体制の構築方法を、三つの重要な視点から解説していきます。実際の業務と連動させながら、外国人社員が無理なく日本語を習得できる環境づくりが鍵となるでしょう。
社内メンター制度の設計ポイント
外国人社員の日本語学習を効果的に支援するには、日本人社員をメンターとして配置する制度が有効です。メンターは単なる日本語の指導者ではなく、業務上の疑問や文化的な違いについても相談できる存在として機能します。
| ステップ | 内容 | 具体的な施策 |
|---|---|---|
| 1. メンター選定 | 適任者の基準を明確化 | コミュニケーション能力が高い社員、異文化理解に関心がある社員、業務知識が豊富な中堅社員を選定 |
| 2. 面談設定 | 定期的な接点を確保 | 週1回程度の定期面談を設定し、業務で使った日本語表現の確認や分からなかった言葉の解説を実施 |
| 3. メンター研修 | メンター自身のスキル向上 | 外国人社員の母国文化の学習、やさしい日本語での説明方法、異文化コミュニケーション研修を提供 |
| 4. 評価への反映 | 制度の継続性を確保 | メンター業務を人事評価に反映、メンター手当の支給、表彰制度の導入 |
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メンター自身への研修も重要であり、外国人社員の母国の文化や、やさしい日本語での説明方法を学ぶ機会を提供するとよいでしょう。地域の国際センターが提供する研修プログラムも役立つリソースとなります。
学習時間の業務への組み込み方
外国人社員が日本語学習を継続するには、業務時間内に学習時間を組み込むことが最も効果的です。
| パターン | 頻度・時間 | 学習内容 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
| 毎日型 | 始業後30分 | eラーニング教材での自習、メンターとの会話練習 | 学習習慣が定着しやすい |
| 週次型 | 週1回1時間 | 業務文書の見直し、メンターとの振り返り | 実務と連動した実践的学習 |
| 朝礼活用型 | 毎朝10〜15分 | 業務で使用する専門用語の確認、当日の業務説明 | 即座に業務に活かせる |
| 月次型 | 月1回2時間 | まとまった文法学習、ロールプレイ演習 | 体系的な知識の習得 |
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- 学習時間を業務の一部として正式に位置づける
- 各部署の業務スケジュールを考慮した無理のない時間設定
- 日本人社員も自然にサポートできる雰囲気づくり
- 製造現場では朝礼時に専門用語を確認する時間を活用
学習時間を業務の一部として位置づけることで、外国人社員は罪悪感なく学習に集中でき、周囲の日本人社員も自然にサポートする雰囲気が生まれます。
進捗管理とモチベーション維持の工夫
日本語学習は長期戦であり、外国人社員のモチベーションを維持する仕組みが不可欠です。
| 施策カテゴリ | 具体的な方法 | 実施頻度 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| 定期評価 |
| 3ヶ月ごと |
|
| 目標設定 |
| 毎月 |
|
| 社内共有 |
| 四半期ごと |
|
| 評価連動 |
| 年次 |
|
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評価結果は本人とメンター、上司で共有し、次の目標設定に活かします。また、「今月は敬語を使ってメールが書けるようになる」といった具体的で達成可能な目標を設定することで、小さな達成を積み重ねる工夫も効果的です。社内報で外国人社員の学習成果を紹介したり、日本語スピーチコンテストを開催したりすることで、学習への意欲が高まります。
さらに、日本語能力の向上を給与や昇進の評価基準に組み込むことで、学習の重要性が明確になり、継続的な努力を促進できるでしょう。
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日本語カフェの活用|外国人向け学習支援サービスの紹介

企業による社内教育や無料教材の活用に加えて、専門的な外部サービスを利用することで、外国人社員の日本語学習をより効率的に進めることができます。
ここでは、外国人材の日本語教育に特化した「日本語カフェ」を中心に、企業が活用できる学習支援サービスの特徴と導入メリットを詳しく紹介していきます。専門サービスを組み合わせることで、企業の負担を軽減しながら、外国人社員の日本語能力を着実に向上させることが可能になるでしょう。
日本語カフェのサービス概要と特徴
日本語カフェは、外国人材の日本語教育にかかる手間やコストを大幅に削減できる高機能な日本語学習システムです。圧倒的な問題数を保有し、独自のカリキュラムによって93%という高い合格率を実現しています。
スマートフォンアプリでいつでもどこでも学習でき、6か月以内に93%の受講生が日本語能力試験に合格している実績があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最大の特徴 | 圧倒的な問題数を保有 |
| 合格率 | 独自カリキュラムで93%を達成 |
| 学習期間 | 6か月以内に93%が日本語能力試験に合格 |
| 学習形式 | 解説動画・ワークシート・演習問題のセット |
| 利用環境 | スマホアプリでいつでもどこでも学習可能 |
| サポート体制 | 8つの学習サポート制度を完備 |
14年にわたる英会話指導ノウハウを結集した短期合格カリキュラムと、高機能LMSシステムにより、効率的な学習を実現しています。提供先は、インドネシアの大学、日本語学校、日本の介護施設で働くベトナム人など多岐にわたります。
企業での活用メリットと導入方法
日本語カフェを企業で導入すると、外国人材教育の手間とコストを9割削減できます。企業アカウントで複数の外国人社員の学習状況を一元管理でき、人事担当者の負担も大幅に軽減されます。企業規模や業種を問わず導入しやすく、個人で語学学校に通うよりも大幅にコストを抑えられる点が魅力です。
- 外国人材教育の手間とコストを9割削減
- 企業アカウントで複数社員の学習状況を一元管理
- 企業規模や業種を問わず導入可能
- 進捗管理が自動化され担当者の負担を軽減
- 個人で語学学校に通うより大幅にコスト削減
提供プラン一覧
| プラン名 | 対象・内容 |
|---|---|
| 海外外国人日本語教育プラン | 海外在住外国人にN5・N4合格を目指す |
| 国内外国人日本語教育プラン | 日本国内で働く外国人向けN3・N2・N1対策 |
| 特定技能対策講座 | 特定技能試験に特化したカリキュラム |
| 技能実習監理団体パック | 監理団体向けの包括的プラン |
| 登録支援機関パック | 支援機関向けのサポートプラン |
多くの企業では、入社時研修プログラムへの組み込みや、業務時間内に週2回程度の学習時間を設定するなど、柔軟な活用を行っています。
日本語カフェの学習システムと実績
日本語カフェの学習システムは、脳科学や学習心理学を応用した科学的根拠に基づいたカリキュラムが特徴です。ハーバード大学やボストン大学の第二言語習得研究の知見を活用し、通常の半分の時間で日本語習得を可能にしています。10言語に対応した母国語解説により、さまざまな国籍の外国人社員に対応できます。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 科学的根拠 | 脳科学・学習心理学を応用したカリキュラム |
| 研究基盤 | ハーバード大学・ボストン大学の第二言語習得研究を活用 |
| 学習効率 | 通常の半分の時間で日本語習得が可能 |
| 多言語対応 | 10言語対応(母国語解説付き)
|
受講生・事業者の声
| 立場 | フィードバック |
|---|---|
| 受講生 | 「まいしゅう2回のみんなといっしょのレッスンが楽しいです。先生もとてもやさしくおしえてくださいます」 |
| 事業者 | 「日本語で会話できるようになり、外国人のモチベーションが上がりました」 |
TOKYO MXのビジネス情報番組「ええじゃない課Biz」でも紹介されるなど、メディアからも注目を集めています。運営する株式会社E-MANは、アジアの貧困問題と日本の労働者不足という双方の社会課題の解決を目指しており、社会的意義を持つサービスです。
参考:PR TIMES(2024年2月26日) TOKYO MXのビジネス情報番組「ええじゃない課Biz」で外国人材向けのオンライン日本語教育システム「日本語カフェ」が紹介されました
まとめ|外国人社員の日本語学習支援で組織力を高める

外国人社員の日本語学習支援は、単なる言語教育にとどまらず、組織全体の競争力を高める重要な投資です。本記事で紹介してきた通り、外国人社員が直面する日本語学習の課題を理解し、適切な教材選定と効果的な支援体制を構築することで、コミュニケーションの円滑化、業務効率の向上、そして外国人社員の定着率向上という具体的な成果につながります。
無料教材の活用から専門的な外部サービスの導入まで、企業の状況に応じた多様な選択肢が存在しており、それぞれの特性を理解した上で組み合わせることが成功の鍵となるでしょう。
日本語カフェのような専門サービスを活用すれば、企業の負担を軽減しながら高い学習効果を実現できます。日本語学習に関する相談や、自社に適した教材サイトの検索でお困りの際は、専門家のサポートを受けることも有効です。今こそ、外国人社員の日本語学習支援に本格的に取り組み、多様な人材が活躍できる職場環境を整えることで、組織全体の成長を加速させましょう。
外国人材の雇用でお困りのことがありましたら、ぜひお気軽に「人材カフェ」の無料相談をご利用ください。企業様向けに様々な職種の外国人材をご紹介しています。


